2010-07-08

ただひたすら凄い 〜聴かずに死ねるか!《第十七話》〜

古今亭志ん輔
“柳田格之進”

これ、難しいと思うんです。
もとは多分、講談なんでしょうね。

こういう“サゲ”がなく、しかも笑わせどころがあまり無い噺って、
ダレてしまった場合、
聞いてる側の空気が演者を押し包んでしまって、
よけいグダグダになってしまう場合があるんですが、
流石、志ん輔師匠でしたねぇ。

情景は勿論、登場人物それぞれの心の動きが、
下手な映画なんかより目に飛び込んでくる感じです。

圧巻は、やはりラストシーンなんですが、
そこに行き着くまでの噺があってこそのラストシーンになってます。

ラストシーンだけ盛り上げようとしても、
やはりダメなんですな。
登場人物それぞれが生きていないと、ラストも生きないですよ。

こまかいところをいちいち
「あーだった、こーだった」と言い出したらキリがないので、
一つだけ、いかに凄かったかという事を。

志ん輔師匠のこの噺、当日のオオトリだったんですが、
終わって、緞帳が下がり始めたとたん、
全身鳥肌でした。
ホントに。

高座にかかった噺を聴いて、鳥肌が立ったのは始めてでした。





ならぬ禁酒、するが禁酒。
芋焼酎、お湯割の一席でございます・・・

2010-05-05

落語に見るシュルレアリスム 〜聴かずに死ねるか!《第十六話》〜

柳家小三治
“粗忽長屋”

例によって、長めのマクラ。
面白いです。

「今日の噺は15分で終わっちゃうから、
もうちょっとマクラ喋ろうか」
といった感じで全然関係無い話。
それにしても、
小三治師匠の趣味や興味の幅・深さが凄いです。

と、唐突に「世の中には粗忽者というのがおりまして・・・」と
いきなり噺に入って、笑いを誘いつつ展開していきます。

落語にはシュールなネタが結構多いんですが、
これは凄かった。

短くやっちまってるんですが、
随所にちりばめられた、登場人物のシュールな会話。
テンポよく展開されるので、
シュールな二人に振り回される自身番も、
シュールに見えてきます。

小三治師匠は、フツーのところをすっ飛ばして、
シュールな部分だけを凝縮して演ってるんですね。
それで、噺が通ってしまい、
かつ、シュールさがドッと前面に出てくるんで、
凄っ! となるんでしょうね。

八と熊の関係や背景なんて、
別に無くっても全然OKなんだな、と思いましたよ。
お、落語に見る引き算、か。

シュルレアリスムは文学か、お笑いか。
少なくとも、抱腹絶倒の一席。
後になって、鳥肌もんの一席、でした。



「そこで酒ぇ呑んでるのは、俺だよ。
んじゃぁ、酒に呑まれてんのは誰だい・・・」

2010-04-11

江戸っ子とは? 〜聴かずに死ねるか!《第十五話》〜

立川談春
“三方一両損”

これ、師匠である立川談志のをBSで見た事はあったのですが、
生は初めて。

談志と比べる話じゃないので、
そこは期待しないでいただきたい。

っと前置きはともかく・・・
江戸っ子気質とはこういう事、という演出でした。
まぁ、当時の江戸っ子を直に知っているわけではないので、
厳密には“江戸っ子気質とはこういう事、ってなんだか、すっごくそう思える”
といったところか。

べらんめぇ口調だとか、そういうことよりも、
どんなところに反応してどんなリアクションをするのか、とか、
仲違いした相手でも、気に入ったところは素直に認める、
というか、自然と真似してしまう、とか・・・

そういったエトセトラを、
凄いスピードで、迫力満点で、
高座からお届けされてしまったのである。

落語仲間曰く・・・
「今日は文珍独演会のゲストだったから、少し抑えめだったかな。
本人の興行だったら、もっとギラギラしてて、怖いぐらい」
ですと・・・

んー、もっと談春!
・・・チケットとれればなぁ。




「へへ、おおかぁ呑まネェ。
たった一献・・・じゃぁ終わらないねぇ、こちとら・・・」

2010-04-05

落語とは客の想像力を引き出す芸である・・・ 〜聴かずに死ねるか!《第十四話》〜

さて、お花見の季節。

ということで、
入船亭扇遊
“百年目”である。

扇遊師匠、流石、です。
当たり前ですけど。

大店の雰囲気や、小僧さんたちの表情やナリ。
屋形船や、土手の上での騒ぎの雰囲気。
大番頭が旦那に出くわした際の驚きと後悔。
そして、その晩の大番頭の心持ち・・・

全ての情景が、目に浮かぶようです。
こりゃぁ、いくら客が鈍くったって、
ここまで演じられて、情景が目に浮かばないヤツぁいないでしょう。

圧巻は、サゲに向かっていくところの、
旦那と大番頭のやりとり。
シンっと聞き入っちゃいましたね。
二人の表情から身振りからが、目に浮かんでホロっと・・・

やっぱり、これだけ演じられれば、
こちとらの乏しい想像力でも、
120%全開ですよ。

んで、ちゃぁんと、師匠の芸になっているってぇトコが、
また流石、です。




おっと、そういえば、唐突ではありますが・・・
二月の落語研究会は五百回記念ということでした。
で、まだまだ寒い中、
入船亭扇橋師匠は“長屋の花見”を演じておられました。
いつまでもご健勝であられますよう!

ちなみに・・・
五百回の記念品は落語研究会特製扇子。
ま、興味の無い御仁にはなんの価値もないでしょうが、
一応、家宝のひとつになりました。




ま、ひとつ、その辺も、想像してやってくださいな。
お面代わりでもいいからさ・・・

2010-03-05

The Next OneはThe Great Oneを超えるのか・・・

ということで、バンクーバー話である。

閉会式から数日経ったところで、
大会全体を振り返ってみようか、
などと大それた事を試みるつもりはない。

ただただ、最終日のアイスホッケー男子決勝に、
全てを持って行かれてしまったから・・・

奇しくも北米対決となった決勝は、
凄いゲームだった。

完全にアウェイの米国は、それでも意地で
試合時間残り25秒を切ったところ(第3ピリオド)、
6人攻撃というギャンブルに出て、
New Jersey DevilsのZach Pariseが
2対2となる同点ゴールを決める。

そして・・・
オーバータイム。

7分40秒。

全ての地元ファンの期待を背負った若者は、
劇的な決勝ゴールを決め、
正にピリオドを打ったのである。

凄いよ。

19歳にしてPittsburg Penguinsのキャプテンという大役を担い、
2009年にはスタンレーカップを穫り、
その翌年、バンクーバーで決勝点を決め、
The Great Oneがなし得なかった、
選手としての金メダル獲得を成したこの時、まだ22歳。

The Nexto Oneと呼ばれる若者、
Sidney Patrick Crosbyは今後、
どんなパフォーマンスを魅せてくれるのだろか・・・

The Great Oneを超える時は近いのかもしれない。



あ、バンクーバーの決勝戦、
3回観てしまいました。
今夜も観ようかな・・・