2013-02-13
血の気が引いた! 〜聴かずに死ねるか!《第十九話》〜
今回は、スペシャル。
“志の輔らくご in PARCO 2013”です!
毎年々々、チケットとれず、
今年もダメかなと思っていた“志の輔らくご in PARCO”。
ところが、千秋楽に、あるお方のお世話になるカタチで、
念願がかなった。
“親の顔”(作:志の輔)
“質屋暦”(作:志の輔 最新作)
〜仲入り〜
“百年目”(古典)
念願叶った贔屓目もあるとは思うが、凄かった。
なんと言っても、たった一人で約3時間!
仲入りがあるもとは言え、
そのパワーには正直、まいりました・・・
今回の新作“質屋暦”は良くできた噺で、
展開も登場人物も、時代背景も、下げも、好きな噺となった。
マクラは、ちょいと説明も含まれていたので長めだったが、
興味深い内容だったので、グイっと引き込まれてしまった。
これは、別の高座で、是非また聴きたい。
・・・で、
圧巻は、“百年目”。
好きな噺ではあるが、およそ70分ぐらいの長尺は初めて。
しかも、マクラ無し。
まず、これだけの高座を演るのに、
客を惹きつけっぱなしにできる噺家さんは、
なかなかいないだろう。
ご一緒させていただいた方もおっしゃってたが、
「なんだか前半は“百年目”のためのマクラだったように感じた。
恐ろしいモノを観ちゃったなぁ」と。
同感。
実際、「ここで会ったが百年目」と、
師匠が頭を下げた瞬間、
ス〜っと、血の気が引いていく感じがして、
「やばい、立てないかも!」となってしまった。
小僧さんたちの、いかにもやんちゃな感じや、
番頭さんの二面性や、
太鼓持ちの調子の良さや、
芸者衆の賑やかさや、
春の大川の花見の情景や、
・・・この噺は様々な演じ分けが要求されるのだが・・・
流石師匠! って、まぁ言うのは簡単だけどね。
ホント、頭の中には、自然と映像が湧き出てくるんだけど・・・
実は、旦那様の語りが凄かった。
こんな“百年目”は初めて。
勿論、演じ分けだって超ハイレベルなんだが、
そこってもしかして、旦那様の語りのためのプレリュードだったの?
っつーぐらいに感じてしまった。
まぁ、その語りの仕草がどうだったこうだったと、
ここで書いてしまっては野暮だと思うのだが、
ちょっとだけ・・・
声のトーンは、かなり抑えめ。
アクションも抑えめなのだが、
お茶を入れるシーンの描写は、素晴らしいアクセントになっていて、
何度でも観たくなる。
この噺を知っている方には、乱暴な言い方かもしれないが、
「旦那様の語り部分だけでも、何度でも観たくなった」
と、伝えておきたい。
・・・・・・・・・
で、結局は、カーテンコールがあり、
お囃子の師匠方の紹介と、三本締めがあったので、
血の気が引いたのも若干おさまって、
席を立つことができた。
「・・・」
今回、野暮は無し。
2012-09-22
NFLのイメージマジック
NFLのオフィシャルフィルムメーカー『NFL FILMS』の
スティーブ・サボウル氏が、9月18日に亡くなった。
氏のNFLのイメージ作りへの貢献度は、計り知れないモノがある。
かの河口正史氏もコメントしていたが・・・
TV中継などで見るNFL映像は
“ゲーム”に焦点があてられている(あたりまえの話だが)。
しかし、NFL FILMSが捉える映像には、
ゲーム自体とは全く関係ないものが多々あり、
それらが素晴らしい、と。
ロングパスのシーンでは、
見事なジャイロ回転で飛んでいくボールのアップだけを
ひたすら追いかける事で、そこにあるドラマを表現する。
極寒の中のゲームのタフさを
凍り付くほど白くなっているプレイヤーの吐く息を
逆光のアップで、そしてスローで捉える事で表現する。
勿論、そのプレイヤーが誰だかはわからない。
また、
豪雪の中を走るプレイヤーの足元だけをドラマチックに
切り取ることで表現する。
これも勿論、そのプレイヤーが誰だかはわからない。
などなど・・・
全てがドラマに溢れている(陳腐な表現だが、
他に言葉が見つからない)。
そしてそこには、見るものを
「NFLって、迫力があって格好良い!」と思わせるオーラがある。
今では見かける手法かもしれないが、
スティーブ・サボウル氏はその先駆者と言ってもいいかもしれない。
スポーツに関して言えば、
そのマインドは『Number誌』にも受け継がれている。
と、勝手に思ってはいる。
前出の河口氏は、高校生の時にその映像を見て、
フットボールプレイヤーを目指したらしい。
フットボールというスポーツの、
ゲームそのものとは別の所に潜むイメージを抽出する事によって、
NFLのファンをさらに獲得し、
さらに、河口氏のように「プレイヤーになりたい」とも思わせる力が
NFL FILMSの映像にはあるということ。
自分も勿論、その映像がファンになった要素の一つになっている。
今となっては、こういった手法は広く知られ、使われているが、
「ホンモノは違うなぁ」とNFL FILMSの映像を見て、改めて思った。
こういったファン獲得の手法って、
○○○の“何を”“誰に”“どのように”伝えるのか、
ということだよなぁと考えれば、
NFLに限らず、いろいろなところで通じる話だと、改めて思う。
そして・・・
スティーブ・サボウル氏は、ホントにNFLを愛していたんだなぁ、
と思った。
作り手が、それを好きであればある程、
観る者に響くモノが、そこには紡ぎ出される、と。
余談:“フィルムで撮る”ということに、かなり執着していたようで、
極寒の中の撮影時にはフィルムが凍り付かないように、
キャメラの側で、ガンガンにお湯を沸かしたり、
と冬のスポーツならではの苦労がかなりあったようだ。
個人的には、機材がかなり進化した昨今、
デジタルでもいいんじゃないの、と思う。
結局は、機材が撮るのではなく、人間が撮るのだから。
2012-01-20
何故、純米や純吟はお燗してもらえないのか?
呑み方はひとそれぞれ。
純米や純吟のぬる燗は旨い! のだがなぁ・・・
頑なに「ウチでは冷やしてしか提供していません」と
客のオーダーを突っぱねる飲食店が結構多い。
冷蔵して出荷・販売されるのは
あくまでも品質保持のためなんだがなぁ。
考えられる、燗してくれない理由は、二つ。
一つは、店側が燗を面倒臭いと考えている。
二つ目は、ただただ頑なに、冷蔵出荷されているのだから、
冷やしてだすのだ! と盲信(もしくは妄信)してしまっている。
やっぱり、酒販店や飲食店は、蔵元と呑み手のパイプ役なんだから、
キチンと“酒を知って”いて欲しいよなぁ。
蔵元さんが、燗を推奨している酒でさえ、
“要冷蔵”とラベルに書いてあるからか、
「当店では冷やして呑むようにお薦めしていますので・・・」
って言う店(超有名店)もあったりする。
もう、この話題は何度か別の所でも書いていたりするんだけど、
また数日前に、あきれるばかりの店に出会ってしまったので、
クドクドと言いたくなってしまった。
あ、夏場に-20ぐらいの純米をキンキンに冷やして、
鱸の洗いなんかと合わせたりするのも、好きですよ。
要は、自分の呑み方を
店に決めつけて欲しくない、ってだけなのか?・・・
ま、今宵は“紀土”をぬる燗で・・・
へうへうとして燗を味ふ
2012-01-07
大滝銀子が格好良すぎるシリーズ
まぁ、辰年になったからというわけではないが、
昇り龍のお銀が活躍する“女賭博師シリーズ”である。
江波杏子の“女賭博師シリーズ”が以前から気になっていた。
で、全17作品を観てみたのである。
(くどいようだが、決して辰年になったから、ではない。)
「入ります」と、クールに発せられる台詞とともに、
カルタを繰る音が静かに響く・・・
ちょいと日本人離れした顔つきの江波杏子が、
髪をアップにして、着物をキリリと着こなし、
時には壺を振り、時にはカルタを繰る姿は、
とてつもなく格好良い。
全17作のうち、
第一弾と第二弾はアキとか夏江という名で登場となるが、
第三弾以降は“昇り竜のお銀”こと大滝銀子として、
シリーズを駈け抜けていく。
毎回おきまりのパターンで、
物語はクライマックスへと向かって行くのだが、
ワンパターンと捉えるか、様式美ととらえるか・・・
自分としては、後者と捉えたい。
幾多の苦難や妨害を乗り越えて毎度々々、
大滝銀子は最後の決戦に乗り込んでいくのである。
時には師匠、時には恩人である親分の無念を晴らすべく!
そんなお銀の周りを固める脇役陣もまた、
このシリーズの魅力といえる。
ほぼ毎回登場の、若き日の成田三樹夫はクールであり、
シリーズ後半の常連となる、若き日の安田(大楠)道代は
どこか憎めない可愛さがあり、
何本かで敵役を演ずる三条魔子は、セクシーな魅力で華を添え、
他に志村喬、伴淳三郎、渡辺文雄、天知茂、川津祐介、
小池朝雄、露口茂、田中邦衛、長門勇、
そしてなんと、丸山(三輪)明宏まで登場と相成るのである。
しかし、圧巻は第五弾“関東女賭博師”にて、
大滝銀子の師匠を演じる、伊藤雄之助である。
シリーズ登場はこの一作ながら、
流石の名バイプレイヤー、凄い存在感を醸し出している。
我々の世代だと、伊藤雄之助と言えば“太陽を盗んだ男”にて、
バスジャック犯を演じていたのが、強烈な記憶に残っているか。
話はそれたが、
大滝銀子は、正に昭和のピカレスクヒロイン。
格好良すぎる、という話である。
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